「内孫より外孫」という言い回しを調べる方の多くは、祖父母の本音や家族の中での力関係に関心を抱いているのではないでしょうか。中には「娘の子は自由に扱いやすい心理が働くのでは」と疑問に思う人や、「長男重視の文化が背景にあるのでは」と考える人もいるでしょう。
実際には、孫と会う頻度が愛着に直結する側面や、祖父母の無意識が孫差別に影響しやすい点も見逃せません。また、ことわざの「内孫より外孫」に違和感を抱く方に向けて、家族間で扱いの違いがなぜ生じるのか、明らかな差別的な扱いにどう向き合うのかを整理していきます。さらに、孫差別が子どもの心に与える影響を和らげる工夫や、祖父母の現役期と引退後の経済状況の違いが判断にどう影響するかについても考えます。
最終的には、祖父母の態度の違いにどう対応すればよいのか、関係を見直し修復するための視点をお伝えし、家族みんなが安心できる関わり方を探るきっかけを提供します。
内孫より外孫に込められた意味と背景

- 祖父母の“本音”が表れる場面
- 緊急時の祖父母の対応
- 娘の子は自由に扱いやすい心理
- 長男重視の文化が背景にある
- 会う頻度が愛着に直結する仕組み
祖父母の“本音”が表れる場面

祖父母はできるだけ平等に孫たちへ接しようと心がけていますが、思わぬ場面で心の奥にある気持ちが表に出ることがあります。特に、急な出来事や判断を迫られるときには、理屈よりも「どちらに親しみを感じているか」といった心情が影響しやすいのです。
例えば、複数の孫から同時に助けを求められたときには、日頃からよく顔を合わせている孫や生活リズムを理解している孫に、自然と先に手を差し伸べてしまうことがあります。ここで働くのは、血縁の距離よりも心理的な近さや安心感だといえるでしょう。
また、冠婚葬祭や地域の集まりなど公の場では、祖父母は「誰に対しても同じように振る舞おう」と意識して行動することが多いといわれます。しかし、家庭の中でリラックスしているときにはその意識が緩み、声のかけ方や話すときのトーン、さらには誕生日や進学祝いに選ぶ品や金額などに、わずかな違いが出てしまうこともあります。
こうした小さな差が積み重なると、受け手側には大きな不公平感として伝わってしまうことがあるため、注意が必要です。
心理学の研究では、接触の多さに比例して人は親しみを感じやすくなるとされ、これを単純接触効果(Mere Exposure Effect)と呼びます。
さらに、愛情交換理論(Affection Exchange Theory) では、「人が愛情を表現し、また受け取ることは、心身の健康や人間関係の安定に欠かせない基本的な行動である」と説明されています。(出典:Wikipedia「Affection Exchange Theory」英語版 )
こうした理論からも、祖父母が特定の孫に無意識のうちに気持ちを寄せやすいのは自然な傾向だと考えられます。公平な関係を保つためには、このような無意識の偏りに気づき、日々の関わりの中で小さな工夫を積み重ねることが大切です。
緊急時の祖父母の対応

緊急の場面で祖父母がどう動くかは、必ずしも血縁の序列によって決まるわけではありません。むしろ、日頃のやり取りや生活の中で築かれてきた習慣の方が影響しやすいといえます。
たとえば、娘の家庭とは普段から連絡を密に取り合っているケースが多く、連絡網や役割分担も自然に整っていることがあります。そのため、いざというときには「誰にどう対応すればよいか」がすぐに思い浮かび、結果として外孫への支援が先に行われやすいのです。
一方で、息子の家庭では、育児の方針や家事の流れに配慮して、祖父母が一歩引いてしまうことも少なくありません。そのため、支援の依頼があっても行動に移すまでに時間がかかるケースが見られます。こうした違いを「内孫・外孫だから」と単純に捉えるのではなく、緊急時の備えや準備の度合いによる差として理解することが大切です。
具体的には、次のような準備が整っているかどうかが行動の速さに直結します。
こうした情報や体制が事前に整っていれば、血縁に関係なくスムーズで一貫した対応が可能になります。つまり、日頃からどれだけ情報を共有し、役割をはっきりさせておけるかが、緊急時の公平性を左右する鍵になるのです。
娘の子は自由に扱いやすい心理

祖父母が娘の子に接しやすいと感じるのは、心理的な要因と文化的な背景が重なり合っているからだと考えられます。まず、娘とは育児の方針や生活習慣を共有しやすく、祖父母が手を貸すときのやり取りもスムーズに進みます。食事やしつけについて話す場合でも、娘であれば言葉のニュアンスが伝わりやすいため、祖父母は安心して関わることができるのです。
一方で、息子の配偶者に対しては、生活習慣や価値観の違いから「踏み込みすぎてしまわないように」と遠慮する場面も多くなります。そのため、祖父母が一歩下がって関わる姿勢をとりやすく、結果的に「娘の子は自由に接しやすい」と感じやすくなるのです。
また、祖父母が娘の子に接しやすいと感じるのは、心理的な要因と文化的な背景が重なり合っているからだと考えられます。まず、娘とは育児の方針や生活習慣を共有しやすく、祖父母が手を貸すときのやり取りもスムーズに進みます。食事やしつけについて話す場合でも、娘であれば言葉のニュアンスが伝わりやすいため、祖父母は安心して関わることができるのです。
一方で、息子の配偶者に対しては、生活習慣や価値観の違いから「踏み込みすぎてしまわないように」と遠慮する場面も多くなります。そのため、祖父母が一歩下がって関わる姿勢をとりやすく、結果的に「娘の子は自由に扱いやすい」と感じやすくなるのです。
また、社会学や心理学の分野では、家庭内の関わり方を整理するために「境界線(boundary)」という考え方が重視されています。特に構造的家族療法では、家庭を「サブシステム(例:親サブシステム、子サブシステム)」の集合と捉え、それぞれに固有の境界線があるとされます。
この境界が曖昧だったり過度に柔軟だったりすると、家族内で役割が混乱したり、コミュニケーションに不具合が生じやすいと指摘されています。そのため、家庭ごとやサブシステムごとに明確な境界線を設けることが、安心感のある関係づくりにつながると考えられています(出典:東京大学公開講義「構造的家族療法」ocw.u-tokyo.ac.jp)。
例えば、家庭ごとに次のようなルールを共有しておくと、祖父母も安心して役割を担いやすくなります。
こうした調整を行うことで、祖父母にとっての「関わりやすさ」は、自由さと責任分担のバランスの中で実現しやすくなり、過干渉や過度な遠慮を防ぐことにもつながります。
長男重視の文化が背景にある

日本社会には、地域や世代によって「長男を中心に家を支える」という考え方が今も残っているところがあります。かつての家督相続制度の時代には、長男が家業や土地を受け継ぎ、両親の介護を担うのが一般的とされていました。その名残が行動の基準として受け継がれ、気づかないうちに長男やその子どもを大事にする振る舞いにつながることがあるのです。
例えば、正月やお盆といった行事で「長男家」が中心になるケースは今も見られます。特に地域の結びつきが強い地方ではその傾向が残っていて、冠婚葬祭や親族の集まりでも自然と優先順位が決まってしまう場面があります。
一方で、現代の家族のあり方は大きく変わってきました。
総務省の統計によれば、共働き世帯は1980年の約614万世帯から2022年には約1,262万世帯へとほぼ2倍に増加しており、夫婦のいる世帯の約7割を占めるまでに拡大しています(出典:Crocs Marketing)。
こうした今の状況を踏まえると、昔ながらの慣習をそのまま適用するのは難しくなっています。祖父母や親族が伝統的な考えに沿って行動するときには、他の家族に負担や不公平感を与えないかを意識することが大切です。
形式的に「長男だから」という考えにとらわれず、家族みんなが納得できる形で役割や行事の進め方を話し合うことが、これからの時代にはより望ましいと言えるでしょう。
会う頻度が愛着に直結する仕組み

心理学の分野では、人と人との関わりの回数が親しさに影響することが分かっています。これは前述の「単純接触効果」と呼ばれるもので、顔を合わせたり声を聞いたりする機会が増えるほど、自然と好意や信頼が深まりやすくなる仕組みです。祖父母と孫の関係もその例外ではありません。
定期的に顔を合わせることができれば、祖父母は孫の生活リズムや好きなものを理解しやすくなり、接し方も無理なく合っていきます。ほんの短い訪問や数分のビデオ通話であっても、その積み重ねが孫にとって「いつもそばにいてくれる安心できる存在」という気持ちを強めるきっかけになります。
また、祖父母が日常生活の中で役割を担うことも、愛着を深める大きな要素になります。例えば、
といった関わりは、ただ会うだけではなく「一緒に体験を重ねる」機会を増やし、そのぶん絆も強く育っていきます。
さらに、最近では遠く離れて暮らしていても、オンライン通話や写真・動画の共有アプリを使うことで関わる回数を増やすことができます。LINEや家族向けのアルバムアプリで日常の写真を送り合ったり、毎週決まった時間にビデオ通話をしたりすれば、遠方の祖父母でも孫の成長をリアルタイムで見守ることができます。
📢家族向けのアルバムアプリ「みてね」については、祖父母が楽しく続けられる【みてね】コメントの工夫と注意点 こちらの記事で詳しくお伝えしています。
このように「会う機会の多さ」と「経験を一緒に積むこと」の両方がそろうことで、祖父母と孫の愛着は自然と深まっていくのです。
内孫より外孫をめぐる心理と対応策

- ことわざ内孫より外孫に違和感
- 家族間で扱いの違いが生じる
- 明らかな差別的扱いの実例
- 現役生活と引退後の経済状況による差
- 祖父母の態度差への対応策を考える
- 内孫より外孫なのか 祖父母が比べてしまう本音と背景 総括
ことわざ「内孫より外孫」に違和感

「内孫より外孫」という言い回しは、祖父母の気持ちや接し方に違いが出ることを端的に表しています。ただし、この言葉をそのまま今の家族のあり方に当てはめてしまうと、少し誤解を招くこともあります。その背景には、社会の変化によって家族の形や関わり方が大きく変わってきたことがあります。
核家族が一般的になり、共働き世帯が増え、親族同士が地理的に離れて暮らすことも珍しくなくなりました。こうした状況では、祖父母と孫の関係は「血縁の近さ」よりも「どれだけ実際に接点を持てるか」によって深まり方が変わってきます。たとえば、外孫でも近所に住んで頻繁に会っていれば自然と距離は縮まりやすく、逆に内孫であっても遠方に住んでいれば関わる機会が限られてしまうこともあります。
この言葉に違和感を覚えたときに、その気持ちを言葉にすることは大切です。「このことわざは今の私たちの暮らしに合っているのか」と立ち止まって考えることで、家族の価値観を振り返るきっかけになります。言葉自体を否定するのではなく、「今の生活にふさわしい関わり方は何か」を話し合う出発点にすることで、家族の理解や絆をより深めていけるのではないでしょうか。
家族間で扱いの違いが生じる

祖父母と孫との関わりに違いが見えるとき、それは必ずしも悪意や差別意識から生まれているわけではありません。多くの場合、生活の条件や家庭ごとの環境の違いが自然に影響していると考えられます。
例えば、祖父母の体調や移動のしやすさは、会う頻度や関われる場面に直結します。公共交通機関の利便性や自宅のバリアフリー化の有無も、関与のしやすさを左右する大きな要素です。また、宗教や地域の行事に積極的に参加する家庭とそうでない家庭では、自然と接点の濃さに差が出てくることもあります。
さらに、連絡手段の違いも見逃せません。電話でのやり取りが中心の家庭と、チャットやオンライン通話をよく利用する家庭とでは、日常的なやり取りの量や質が変わります。加えて、それぞれの家族の生活リズムが異なれば、会うタイミングや行事への参加状況に差が生じ、それが「扱いの違い」と感じられる場合もあるのです。
大切なのは、こうした違いをすぐに「不公平」や「差別」ととらえるのではなく、背景にある事情を丁寧に見極めることです。そうすることで、どの部分を工夫すれば家族の間でよりバランスが取れるのかが見えやすくなり、自然に改善の道を探しやすくなります。
明らかな差別的扱いの実例

誰が見ても不公平だと感じるような行動が続くと、子どもの心に強い影響を与えることがあります。例えば、祝い金の金額に大きな差がある、呼び方や言葉づかいに上下関係が表れている、行事への参加を一方の孫にだけ固定する、といった対応は、子どもに強い不公平感を抱かせます。
子どもは大人以上に敏感にそうした違いを察知しやすく、「自分は大切にされていないのではないか」と感じてしまうことで、自尊感情や「家庭は安心できる場所」という感覚が揺らぐことにもつながります。
対処の第一歩は、事実を冷静に共有し、子どもがどのように受け止めているのかを具体的に伝えることです。そのうえで、望ましい行動の例を示して合意を図ると効果的です。例えば、
といった具体策をルールとして取り入れることで、再発を防ぐことができます。感情論に終わらせず、実際の行動計画に落とし込むことが大切です。
また、日本財団が実施した「こども1万人意識調査」では、家庭への満足度が低い子どもほど幸福感が下がり、不安感やストレスを感じやすい傾向があることが報告されています(出典:日本財団こども一万人意識調査)。このことからも、家庭内での公平さを意識することが、子どもの健やかな成長を支えるうえで欠かせないといえます。
現役生活と引退後の経済状況による差

祖父母のライフステージによって、孫への関わり方や支援の内容は自然と変わっていきます。働いている時期には経済的に余裕があるため、入学祝いや行事費用など、お金に関わるサポートが中心になることがよくあります。
一方で、退職後は収入が減る代わりに自由な時間が増えるため、送り迎えや通院の付き添い、学校行事への参加といった「時間を使った支援」に形を変えていきます。
実際に統計でも、高齢期の家計は収入が現役期に比べて減少する傾向が示されており(出典:総務省統計局『家計調査』)、その影響が支援のスタイルに表れることもあるのです。
こうした変化はごく自然なものですが、孫の立場からすると「たくさんお金をもらえる家庭とそうでない家庭」というように不公平に感じられることもあります。そのため、祖父母の気持ちや事情を丁寧に伝え合い、家族の中で理解を深めることが大切です。
また、金銭的な支援が難しい場合には、別のかたちで思いを示す工夫が役立ちます。
ライフステージ | 期待されやすい支援 | 時間資源 | 注意点 |
---|---|---|---|
現役期 | 入学祝い、行事の費用負担 | 限られる | 金額差が続くと不公平感が強まる |
退職前後 | 学用品の一部補助、短時間の送迎 | 少し増える | 支援の頻度や上限を事前に相談 |
引退後 | 送迎や通院の付き添い、行事参加 | 増える | 体力配慮と無理のない役割設定が鍵 |
金額を完全にそろえるのが難しいときには、手書きのメッセージカードや写真アルバムを贈ったり、行事に参加して一緒に思い出を作ったりすることも素敵な方法です。
こうした工夫は、祖父母の関わり方の幅広さを示すだけでなく、孫にとって「自分は大切に思われている」という実感を持つきっかけにもなります。
祖父母の態度差への対応策を考える

自分の態度に差が出ているのではないかと気づいたときには、まずは冷静に振り返ることが大切です。「どの場面で、どの孫と、どう接していたか」を整理してみると、無意識に偏りが出ていた部分を見つけやすくなります。そのうえで、家族に「こういう意図で行動していた」と率直に伝えると、誤解が解けやすく、前向きな対話につながります。
共有の土台をつくる
家族と話し合うときは、「みんなが安心できる関係を育てたい」という気持ちを軸に伝えると建設的です。「これはしてはいけない」ではなく、「こういうふうにすると嬉しい」といった前向きな表現を心がければ、親世代も受け入れやすくなります。誕生日や進学など節目ごとの関わり方を、簡単なメモにまとめて共有しておくのも良い方法です。
線引きと柔軟性の両立
祖父母として自由にできることと、事前に相談が必要なことを家族と確認しておくと安心です。たとえば、急な体調不良の対応や合鍵の扱いなど、実務的なことは具体的にルールを決めておけば、お互いに不安なく関われます。
運用と見直し
一度決めたルールも、子どもの成長や生活環境の変化に合わせて見直すことが大切です。年に一度ほど振り返る機会を持てば、小さなズレを早めに修正でき、長く安定した関係を築きやすくなります。
内孫より外孫なのか 祖父母が比べてしまう本音と背景 総括
記事のポイントをまとめました。
✅「内孫より外孫」ということわざは昔の家族制度や文化の名残であり、今の暮らしにそのまま当てはめるのは難しい。
✅祖父母の本音は、緊急時など思わぬ場面で出やすい。
✅娘の子を扱いやすく感じるのは、言葉が伝わりやすく、家庭のルールが共有されやすいから。
✅長男重視の考え方は一部に残っているが、今は家族ごとの事情に合わせた工夫が必要。
✅会う回数や小さなやり取りの積み重ねが、愛着や安心感を育てる。
✅無意識の偏りは、自分の行動を振り返り、節目を「平等に祝う機会」にすることで少しずつ改善できる。
✅お祝いの金額や呼び方などに差があると子どもは敏感に気づくため、事実と影響を整理して話し合うことが大切。
✅孫の気持ちは否定せずに「そう感じたんだね」と受け止め、安心して話せるように耳を傾けることが大切。
✅祖父母がそうした姿勢を持つことで、孫は「気持ちを理解してもらえた」と感じ、心の負担を軽くできる。
✅経済状況の違いは、金銭だけでなく時間や思い出づくりで補い合う工夫が役立つ。
✅贈り物は金額の均等さよりも「どう気持ちを伝えるか」を大切にすると納得しやすい。
✅家族で話すときは「次からどうするか」に焦点をあてると前向きになれる。
✅家族ルールは「相談して決めること」と「任せてもよいこと」に分けて明確にしておくと安心。
✅遠方でもオンラインや写真の共有を活用すれば、接点を増やして関係を深められる。
✅「内孫より外孫」という言葉は否定するのではなく、家族の関わり方を考え直すきっかけにできる。
最後までお読みいただきありがとうございました。