「ひ孫に会える確率」を、統計とデータでやさしく解説します。
感覚的な希望や不安を“数字”に置き換えることで、家族で共有しやすい判断材料にできます。
本記事は、既存記事【ひ孫に会える確率と健康寿命を考えて大切な家族の未来を思う】を軸にした連載の第1回です。
本連載では「基礎編 → 健康寿命編 → 国際比較編 → 実践編 → 未来予測編」と段階的にひ孫に会える確率を解説していきます。
第1回の今回は“基礎編”として、平均寿命や初産年齢といった統計データをもとに、確率を数字で読み解きます。
今後の回では、健康寿命を延ばす工夫や海外の多世代家族の事例なども取り上げ、暮らしや家族の未来に役立てるヒントとしてお伝えしていきます。
ひ孫に会える確率の全体像と目的

- ひ孫に会える確率の基本的な考え方
- 統計的推計(実際にひ孫がいる人の割合)
- 理論モデルによる確率の計算方法
- 平均寿命と健康寿命の最新データ(男女別)
- 初産年齢の上昇と世代間隔の影響
ひ孫に会える確率の基本的な考え方

ひ孫に会えるかどうかを考えるとき、大きく分けて二つの見方があります。
ひとつは実際のデータをもとにして、どのくらいの人がひ孫と会えているかを割り出す方法です。たとえば60歳以上の方を対象にして、その中で「ひ孫がいる」と答えた割合を計算すると、今の社会での目安を知ることができます。
もうひとつは、統計上の数字をもとに理論的に計算する方法です。平均的に何歳で子どもを産むのか、世代の間隔は何年か、そして年齢ごとの生存率(生命表)を組み合わせることで、「この条件なら何歳くらいでひ孫に会える可能性がある」と試算できるのです。
前者の方法は実態に近くわかりやすいのですが、調査の仕方や地域によって数字が変わりやすいという弱点もあります。後者の方法は少し難しいですが、条件を変えて「もしも早く子どもができたら」「もし寿命が長かったら」というシナリオを比較できるのが強みです。
実際には、この二つの方法を組み合わせるのが一番確かです。
まずは最新の調査で、現実にどれくらいの人がひ孫に会えているのかを知る。そして次に、家族の年齢やライフスタイルをもとに、将来のシミュレーションをしてみる。そうすることで「いま」と「これから」をバランスよく理解できます。
また、同居や近居といった生活環境、電話やオンライン通話などの交流手段も合わせて考えると、数字だけでは見えない家族とのつながりもイメージしやすくなります。
統計的推計(実際にひ孫がいる人の割合)
統計的推計とは、ある年齢層の中で「ひ孫がいる」と答えた人の割合を計算する方法です。数式にすると次のようになります。
(ひ孫がいる人の数)÷(60歳以上の人口)×100
一見すると単純ですが、正しく理解するにはいくつか気をつけたい点があります。
これらの点を踏まえて、国勢調査や高齢社会白書などの公式データを組み合わせれば、時代や地域ごとの違いを含めて「どのくらいの人がひ孫に会えているのか」をより正確に理解できます。
理論モデルによる確率の計算方法

理論モデルでは、世代の年齢差と寿命のデータをもとに「ひ孫と会える可能性」を数式で表します。
考え方はシンプルで、平均的に子どもを産む年齢を g とすると、ひ孫が生まれるまでにはおよそ 3g 年がかかります。そして、その時点で本人が生きている確率(S(3g) と表す)が、基本の条件になります。
ただし、実際には「子どもが生まれる」「孫が生まれる」というイベントも必要です。そこで次のような要素を組み合わせます。
これらを加えることで「生きている」だけでなく「実際にひ孫が誕生する」可能性まで見積もれます。数式にすると少し複雑になりますが、要するに「寿命の長さ」と「世代のつながりの確率」を掛け合わせて考える仕組みです。
実際に計算する手順は次のような流れです。
- 世代間隔の幅を設定する(平均年齢だけでなく早い・遅い場合も考える)
- 生命表を使って、生存率(年齢ごとの生きている確率)を調べる
- 子どもの人数の分布を反映させる(平均2人か、それとも1人が多いのかなど)
- 出生率を参考に「孫が子を産む確率」を足し合わせる
- コンピュータで繰り返し計算し、だいたいの可能性の範囲を出す
こうすることで「早婚・多子の家庭」と「晩婚・少子の家庭」の違いや、男女差、地域差を公平に比べることができます。寿命の長さだけでなく、家族の人数や世代間隔が結果を大きく左右することが見えてきます。
初産年齢を基準に、ひ孫誕生までに必要な年数を算出し、厚労省「簡易生命表」に基づく年齢別生存率を掛け合わせると、次のような結果が得られます。
初産年齢 | ひ孫誕生までの年数 | 男性の生存率 | 女性の生存率 | コメント |
---|---|---|---|---|
25歳 | 75歳 | 75.3% | 87.9% | 早婚家系なら実現しやすい |
30歳 | 90歳 | 25.8% | 50.2% | 平均的な家系では難しい |
35歳 | 105歳 | 0.05% | 0.47% | 到達は極めてまれ |
(出典:厚生労働省「令和6年簡易生命表(2024年)」)
さらにグラフで見ると、男女差や世代間隔の違いがより分かりやすくなります。
以下のグラフは、厚生労働省の「令和6年簡易生命表(2024年)」をもとに、平均初産年齢を30歳と仮定した場合に、ひ孫誕生時に生存している確率をシミュレーションしたものです。

ご覧のように、
- 男性(青線)は75歳時点で約75%が生存していますが、90歳では約25%に低下します。
- 女性(オレンジ線)は同じく75歳で約88%、90歳でも50%程度が生存しており、明らかに女性の方がひ孫と会える可能性が高いことが分かります。
つまり、世代間隔を「30年×3=90年」とした場合、男性は平均的には到達が難しく、女性は約半数がひ孫と対面できる可能性を持つという結論になります。
厚生労働省の統計によると、90歳まで生きている人の割合は男性でおよそ4人に1人、女性でおよそ2人に1人とされています。(出典:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」 )
この差が、そのまま「ひ孫に会える確率」の男女差に結びつきます。
75歳前後までにひ孫が生まれる家庭では、男女ともに生存率が高いため確率も高めになります。
一方で、93歳前後でようやくひ孫が誕生する家庭では、女性は可能性が一定残りますが、男性ではかなり限られた割合になります。
そのため、家族の人数が多い、世代間隔が短いといった要素が確率を押し上げる大きなポイントになるのです。
平均寿命と健康寿命の最新データ(男女別)

平均寿命とは「生まれた赤ちゃんが平均して何歳くらいまで生きるか」を示す数字です。一方の健康寿命は「日常生活に大きな不自由がなく、自分で元気に過ごせる期間」を表します。長生きすることも大切ですが、どのくらいの間を元気に暮らせるかが家族との交流には大きな意味を持ちます。
最近の統計によると、男性の平均寿命はおよそ81年、女性は87年ほどです。健康寿命は男性で72〜73歳、女性で75〜76歳とされており、平均寿命との差は男性で約9年、女性で約12年となっています。
この差の部分は、介護や医療の助けが必要になりやすい時期であり、ひ孫と会えても「元気に遊んだり会話したりできる期間」とは限らないことを示しています。
また、90歳まで生きられる割合を見ると、男性は約4人に1人、女性は約2人に1人とされています。女性の方が長生きしやすいことから、ひ孫と会える可能性に男女で違いが出る理由のひとつになっています。
以下に代表的な指標を整理しました。
区分 | 平均寿命(2022年) | 健康寿命(2022年) | 不健康な期間の目安 |
---|---|---|---|
男性 | 81.05歳 | 72.57歳 | 約8.5年 |
女性 | 87.09歳 | 75.45歳 | 約11.6年 |
このように平均寿命と健康寿命を見比べると「ひ孫に会えるだけではなく、どのくらい元気に関われるか」という視点が大切になります。
医療や健康に関する数字は、公的な統計をもとにしたものを参考にすることが安心です。
(出典:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」 )
初産年齢の上昇と世代間隔の影響
ひ孫に会えるかどうかを考えるとき、初産年齢が大きなポイントになります。昔と比べると、子どもを産む年齢は少しずつ上がってきました。そのため、世代の重なりが遅くなり、ひ孫が生まれるまでにかかる時間も長くなっているのです。
以下は初産年齢の平均値の推移です。
年 | 初産平均年齢 |
---|---|
1975 | 25.7歳 |
1985 | 26.7歳 |
1995 | 27.5歳 |
2005 | 29.1歳 |
2015 | 30.7歳 |
2021 | 30.9歳 |
2022 | 30.9歳 |
2023 | 31.0歳 |
初産年齢の上昇が世代間隔延伸→ひ孫に会える確率の影響に直結します。
直近では平均が31歳となり、単純に3世代を重ねると約93年が必要になります。これは、ひ孫と会うために90歳以上まで生きる必要があるケースが増えていることを意味します。平均寿命や健康寿命を考えると、このことは大きなハードルになると言えます。
ただし、すべての家庭が同じ条件ではありません。家族の中に早めに子どもを持つ人がいれば、その分世代のつながりは短くなり、ひ孫に会える可能性は高まります。世代の中には早婚の人や晩婚の人が混ざるため、そうした幅を考えることが現実的な理解につながります。
ひ孫に会える確率を高める視点

- 男女差と祖母仮説(なぜ女性は有利か)
- 寿命の遺伝性と生活習慣の影響
- 早婚家系と晩婚家系のシミュレーション比較
- 地域や文化による違い(同居・核家族化)
- 海外の事例と日本の現状の差
- 数字と行動で会える確率を高める|ひ孫に会える確率
男女差と祖母仮説(なぜ女性は有利か)
男女の寿命の差は、ひ孫に会えるかどうかに直接影響します。女性は平均寿命が男性より長く、90歳まで生きる人の割合もおよそ半分に達しています。そのため、女性の方がひ孫誕生の時点で生存している可能性が高くなります。
また、進化の研究で語られる「祖母仮説」という考え方があります。これは、女性が閉経後も長生きすることで子や孫の子育てを助け、その結果として家族全体の生存率が上がったのではないか、という説です。この考え方は、女性の長寿が世代をつなぐ役割を果たしてきたことを示しています。
現代の家族を見ても、母方の祖母や曾祖母がひ孫と会えるケースは少なくありません。しかも健康寿命が長い分、ただ「会う」だけでなく、実際に子育てや交流に関わる期間も長くなりやすいのです。そのため、母方の家族が世代間交流の中心になることも多いと考えられます。
このように見ると、女性がひ孫に会える確率で有利になる理由が自然に理解できます。
寿命の遺伝性と生活習慣の影響

人がどれくらい長生きできるかは、生まれつき持っている体質(遺伝)と、その後の生活の仕方や環境によって決まります。
研究では、寿命の違いのうち遺伝が関わるのは15〜30%ほどとされています。つまり「親が長生きだから自分も長生きできる」とは限らず、多くは自分自身の生活習慣や環境に左右されるのです。
残りの70〜85%は、食事の内容、体を動かす習慣、十分な睡眠、病院にかかりやすい環境、住んでいる地域など、日々の暮らし方に関係しています。公的な健康施策では次のような習慣がすすめられています。
これらを実行することで、寿命そのものが延びるだけでなく「元気に動ける期間(健康寿命)」を長く保てるようになります。
ひ孫に会えるかどうかを考えるときは、ただ生きていることだけでなく「元気で会えること」が大切です。
(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「健康寿命の延伸」 )
生活習慣とひ孫に会える確率のつながり
早婚家系と晩婚家系のシミュレーション比較

子どもを産む年齢の違いは、ひ孫に会えるかどうかに大きく関係します。ここでは、初産年齢が25歳の場合と31歳の場合を比べてみましょう。
また「子どもの人数」も大きなポイントです。兄弟姉妹が多い家庭では、それぞれが結婚して子どもを持つ可能性があるため、ひ孫につながる道が増えて確率も高まります。
一方で、一人っ子が続く家庭では、その一人に子どもができるかどうかが大きな分かれ目になります。
このように、世代の間隔が短いことと、子どもの人数が多いことが、ひ孫に会える確率を高める大切な要因となります。
地域や文化による違い(同居・核家族化)

ひ孫に会える可能性は、住んでいる地域や文化の違いによっても変わってきます。昔は祖父母・親・子どもが一緒に住む「多世代同居」が多く、自然にひ孫に会える環境がありました。しかし、近年は核家族が増え、日常的に会う機会は少なくなっています。
ただし都市部では、オンライン通話や写真・動画のやり取りが盛んになり、離れていても顔を見たり声を聞いたりできるようになっています。地方では今も子どもが多い家庭や、親戚同士のつながりが強い地域があり、そのような環境ではひ孫に会える割合が比較的高い傾向があります。
また、地域によって結婚年齢や出産のタイミングが異なるため、同じ寿命であっても世代の重なり方に差が出ます。例えば、結婚が早い地域では若い年齢でひ孫に会える可能性が高まり、晩婚化が進んだ地域ではより高齢になってからの出会いに頼ることになります。
さらに、帰省のしやすさや交通手段の有無も大きな要素です。どんなに元気に長生きできても、会うための環境や仕組みが整っていなければ、実際に顔を合わせる機会は減ってしまいます。
ひ孫に会えるかどうかは、寿命や世代間隔だけでなく、日々の暮らしの環境にも大きく左右されるのです。
海外の事例と日本の現状の差
世界を見渡すと、ひ孫や玄孫に会える確率は国や地域によって大きく変わります。
海外には、6世代が同時に出会う稀なエピソードも報道されています。たとえばアメリカ、ケンタッキー州では98歳の曾曽曽祖母が、生まれて間もない曾曽曽孫のひ孫に初めて手を触れる写真が撮影され、ABC News や Fox Newsでも大きく報じられました。
また、1980年のイギリスでは、サウサンプトンに住むルイス一家が「6世代が同時に生存している世界初の家族」としてギネス世界記録に認定されました。
こうした海外事例は統計やモデルでは見えにくい「現実の実感・可能性」を伝える強い材料になります。
一方で、日本は少し事情が違います。厚生労働省の統計によると、最近の平均初産年齢は31歳前後となっており、昔に比べて出産の時期が遅くなっています。
加えて少子化の影響もあり、寿命そのものが長くても、四世代や五世代が同時にそろうことは海外に比べて少なくなっているのです。つまり、日本では「ひ孫や玄孫に会える人」が海外よりも少ない傾向にあるといえます。
この違いを理解するうえで大事なのは、単に「どれくらい長生きできるか」だけでなく、「世代ごとの間隔」と「子どもの人数」をあわせて考えることです。
長生きできても出産年齢が遅く、子どもの数が少なければ、世代が重なりにくくなります。逆に、寿命が少し短くても早く子どもを持ち、子どもの数が多ければ、ひ孫や玄孫に会える可能性は高まります。
海外と日本の状況を比べてみると、家族のつながりのあり方が国ごとの文化や社会の違いで大きく変わることがよくわかります。
数字と行動で会える確率を高める|ひ孫に会える確率
記事のポイントをまとめました。
✅ひ孫に会える確率は統計と計算の両輪で把握する
✅初産年齢と世代間隔が確率の基礎パラメータとなる
✅平均寿命と健康寿命は到達と交流の二面で評価する
✅女性は長寿傾向で到達と活動期間の両面が有利になる
✅遺伝の寄与は限定的で生活習慣の余地が大きい
✅早婚家系は必要年数が短く確率が高まりやすい
✅多子は分岐数を増やし到達経路を増幅させる
✅一人っ子が続くと偶然性の影響が相対的に大きい
✅地域差は婚姻年齢と世帯構造の違いで生じやすい
✅オンライン活用は距離の不利を部分的に補完できる
✅90歳生存割合の把握は現実的な設計に役立つ
✅健康寿命の底上げは交流の質と回数の土台になる
✅帰省や行事の設計は実面会の機会創出に直結する
✅モデルは生命表と出生分布を併用し現実化を図る
✅家族内でデータを共有し行動計画へ結び付ける
🔔 次回予告:Vol.2(健康寿命編)
次回は 「健康寿命」を数字で読み解く 回をお届けします。
食事・運動・睡眠・社会参加など、日常の工夫がどのように
「ひ孫に会える確率」 に影響するのかを最新データで解説します。
👉 読むことで、家族と過ごす “元気な時間”をどう増やせるか が分かります。
ぜひお楽しみに!
最後までお読みいただきありがとうございました。